2022年2月9日水曜日

TSMCへの補助金

先日、アメリカでこのような法案が通りました。
 
 
アメリカには、制御系の半導体メーカーとしてインテルや、DRAMなどを主とするマイクロンという半導体企業がありますが、TSMCやサムスンといった企業も視野に入れた国産化の安保政策ですね。
EUでも、域内生産の整備に対する補助金を出す法案が検討されています。
翻って日本。
昨年12月の話ですが、TSMCがソニーグループと共同出資によって九州に作る工場に対し、政府は補助金を出すことを決めました。
今後、複数年に渡って拠出し、合計額は4000億円になる見込みです。
これに対し、今更半導体を誘致しても遅いとか、導入するプロセスが古いとか、世界の半導体製造に追いつけないといった論評をいくつか見ました。
ん~~~、なんかねぇ、ちょっと筋が違いますよね・・・
そこは狙ってないだろう、と。
今回のTSMC誘致に関して改正したのは、「特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法」。
この適用認定を受ける為には、
 
・一定期間以上の生産の継続
・需給逼迫時の増産対応や研究開発を含む国内での安定的な生産
・技術情報の適切な管理
 
などの条件を満たす必要があります。
1つ目は補助金を出す条件には必須として、2つ目は今のような逼迫時への対応と技術習得、3つ目は安全保障に関する条項ですね。
もちろん、技術習得が目的のひとつであることは間違いありませんが、半導体の供給が逼迫している今の状況を反映した改正なので、この供給不安が長引く状況に加え将来的な需要増加予測を考えると、その対応が目的の相当部分を占めるんではないでしょうか。 
単純に技術的なことを言えば、このTMSCの工場で作る半導体はロジック半導体と呼ばれるものですが、世界の先端を行く1桁nmではなく、22~28nmというかなり古いプロセスです。
なので、この数字の部分だけを取って見れば、今更こんな古いプロセスを補助金を出してまで誘致してどうするんだ、というのは解らなくはないですが、それは表面的過ぎるんですよね。
国内のルネサスや旭化成で作っていたプロセスは、40nm以上でもっと古い為、国内勢にとってはより進んだプロセスという技術導入面でのメリットがあるのは当然として、技術の世界では、「古い=枯れて安定性が高い」という認識ですから、リセットがそうそうできない製品や10年単位で動く製品に関しては、古いプロセスの半導体は非常に大事な部品となっており、今問題となっているそれらの半導体供給が安定するわけです。
22~28nmの製造プロセスの半導体は、今はまだ精密機器への使用が中心ですが、今後は、他の工業製品の制御用として使われる制御用半導体も22~28nmが中心になるといわれていますからね。
この枯れた半導体の安定供給は、他の製造業に対するプラスの影響が大きいんですな。
特に自動車など、これからEV化やFCV化が進むと、使用する半導体は数倍から5・6倍になるとの予測もありますし。
こういう面を考えると、そんなに悪くない現実的な投資判断だったと思いますね。
 
また、世界的な動きを見ると、冒頭のニュースのようにアメリカの動きとも連動していると言えます。
アメリカに比べれば、財政規模は相当小さいですが。
アメリカのこの政策の念頭にあるのは、もちろん中国。
対中国を念頭に、安全保障関係のサプライチェーンの再構築を図っており、それが日本にも波及したと言えるんでしょうね。
 

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