2016年2月12日金曜日

マイナス金利と円高

昨日、ロンドン市場で一時、1ドル110円台に突入したようですね。
ついこの前まで120円台だったことを考えれば、かなり動きが荒いですな。
テレビのニュースでは、日銀のマイナス金利導入がトリガとなって円高が進んでいるというような印象の報道をしています。
確かに、マイナス金利というのはかなりのインパクトで、それに理由を求めるのも分からないではないですが、マイナス金利はあくまで金融緩和方向の施策です。
先立って導入された欧州では、導入以降、確か年末までは5%を超える通貨安の方向だったはず。
緩和ですからね。
通貨安へ動くのは当たり前。
つまり、今回の円高は、緩和策による通貨安方向のベクトルを打ち消すだけの何かがあったということで、マイナス金利が引き金ではないでしょう。
更に言えば、金融が不安定な流れに抗う為に打たれた対策だったとも言えます。
ま、日銀のマイナス金利自体は、今まで積み上げられた預金には適用されず、今後積み上げられた分にはマイナス分を適用するよ、という影響の少ないやり方で、マイナス金利という言葉のインパクトを最大限に利用しようとするやり方でした。
テレビでは、この辺りの影響の少なさをあまり説明しませんが。
逆に言えば、影響が少なかったが故に、これほど円高に動いたのかなという気もしますね。
それはともかく、よく言われるような中国の経済不振だけでは説明がつかないほどの動きなので、何が原因なのか色々とニュースを見ていたところ、ユーロ圏の中では例外的に堅調だったドイツで金融不安が持ち上がっているようです。
具体的には、ドイツ銀行の発行するCoCo債が売られているとのこと。
CoCo債というのは初耳だったんですが、ノックイン条件が付いた転換社債の一種のようですね。
欧州危機で財政が傷んだユーロ圏の銀行は、何もなければ社債にしか過ぎないCoCo債を、自己資本増強の為に1000億ドルほど発行していますが、これは何かあれば株式転換や債券の減額などが発動する債券です。
ん?株が希薄化するからまずくね?と、金融不安の空気から投資家が疑ったようで、希薄化は株価下落を意味しますから、発動に先駆けて売ろうと株価が下落しました。
当然ながら、人気の無い債券も売られており、ドイツ銀行自身が買い戻すことに言及する状況にもなっています。
ドイツ銀行と言えば、サブプライム問題から欧州危機の頃にかけて、好調なドイツ経済を象徴するように割と攻めの戦略を採ってデリバティブの取引を増やしていたんですが、今は裏目に出ていますね。
欧州の銀行は、危機を受けて、傷んだ債権を満期目的で保有すると時価評価しなくて良いというルールにしましたから、本質的には先送りしただけで、あまり解決していません。
日本のバブル崩壊の際には、あれだけ時価評価を求めたにもかかわらず、今回はサクっとルールを変えたって点は、日本人としては腹立たしいですが、誰しも我が身はかわいいということなんでしょう。
それはともかく、満期になれば、発行元は債券を償還しなければなりませんが、景気後退で実業で稼げていないと当然払えず、デフォルトもあるわけです。
デフォルトになれば再び銀行の自己資本が傷付く。
ただ、この潜在的な問題を浮き上がらせたのは、巡り巡って、正月早々荒れ模様となった中国の株価を受けた空気なんかに行き着くんでしょうね。
結局、中国かいな(笑)
とりあえず、もう少し落ち着いて欲しいものです。
 

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