シリアと言えば、反米の一角として存在感があり、ロシア、イラクといった反米国家と仲の良い国ですね。
2011年のアラブの春以降、民主化運動が中東を席巻する中、独裁政権は倒されずに踏みとどまったものの、深刻な内戦状態になりました。
その内戦では、反政府勢力が一枚岩ではなかったため、なんとかアサド政権が優勢となりましたが、今度はイスラミックステートが急速に力を伸ばしたため、これと引き続き戦うことになり、劣勢に追い込まれてしまいます。
ここで政権側として軍事介入したのがロシアで、それ以来、非常に近しい関係を保っていました。
しかし、今年に入ってから反政府勢力の勢いが増し、政権崩壊となったわけです。
これは、ロシアがシリア駐留軍から部隊を引き抜き、その弱体化を見た反政府勢力が攻勢を仕掛けたからのようですね。
また、アサド政権を支援していたイランや民兵組織のヒズボラが、対イスラエル戦に力を割かざるを得なくなったため、という理由もあるようです。
つまり、2つの大きな戦いが、このシリアに影響したと。
こうやって見てみると、政治軍事の世界というのは、玉突きのように情勢が絡み合うものだと改めて思いますね。
振り返れば、ロシアがウクライナに侵攻での短期決戦に失敗したことから戦力を大幅に増強せざるを得なくなり、アルメニアの駐留軍から部隊を引き抜いたところ、その隙を衝いたアゼルバイジャンが、2023年にアルメニアの実効支配するナゴルノカラバフに侵攻し、占領したという事件がありました。
つまりは、シリアと同じようなパターンなんですが、これによってアルメニアは、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)への参加を停止し、それまでの親欧米路線を強化しています。
結果的には、ウクライナ侵攻が、国際的なロシアのプレゼンスを弱めているということになりますね。
今回も、シリアを起点として中東やアフリカへの影響力を行使していたロシアにとっては、かなりの痛手になるでしょう。
一方でジョージアでは、これまで親欧米政権でしたが、ややロシアに傾いているようですね。
ここも一部地域をロシアが独立承認したという、ウクライナと同じような状況なんですが、ロシアにとっては、成功に近いケースになっているのかもしれません。
成功例と失敗例が紙一重ですから、この辺りが、世界情勢の何とも難しいところですな。
話は戻りますが、アサド政権が崩壊した後、即座に動いたのがイスラエルで、シリア軍基地を空爆し、緩衝地帯となっているゴラン高原へも兵を派遣しました。
領地拡大ではなくリスクを未然に防ぐためですが、この辺りはさすがに素早い。
一方、反政府組織を支援していたトルコも、引き続き支援して介入を深めるでしょう。
さらに、反政府勢力も決して一枚岩ではなく、紆余曲折が予想されます。
これに挽回を図るロシアやイランがどう動くか。
まだまだ情勢が変転しそうですね。
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