SVBこと、シリコンバレーバンクの破綻の余波が続いていますね。
人によっては、リーマンショック再来の予兆なんて事を言う人もいますが、リーマンブラザーズが破綻する半年前のベアースターンズの破綻の際は、もっとヤバい雰囲気があったと記憶しています。
実需筋からの、これはヤバいんじゃないか情報が、ネット上に散らばっていました。
今回は、そんな情報があまりありません。
破綻規模は約28兆円と巨大ですが、融資先が偏っているのもあってか、影響はそれほど大きくなさそうです。
SVBの余波を受けて、シグネチャーバンクも破綻し、前から問題が燻っていたクレディ・スイスの株価は垂直落下、また、SVB破綻の直前に破綻していた、仮想通貨を多く取り扱うシルバーゲートキャピタルも含め、銀行セクターに懸念が出ていますね。
ただ、アメリカの金融当局が、早めに預金者保護の火消しに動いた為、連鎖的に影響が出るというところまでは行っていないようです。
SVBが破綻した原因はと言うと、それはもう古くからの破綻理由の王道である取り付け騒ぎ。
えっ?今時そんなことが?
なんて思いましたが、SNSの影響も大きかったというのが、今風でしょうか。
結局、預金を下ろす預金者が増えた為、現金を用意しなくてはならなくなり、利上げ前の低い利率の債権まで現金化しなくてはならなくなった・・・というのが最終的な引き金になったようです。
これだけ急速な利上げをされると、利上げ前に購入した債権は、利回りが低すぎてとても売れるような価格ではなくなるんですが、満期前提で持っていれば、インフレ負けするとしても、取り敢えず損はしない。
しかし、売ってしまえば、損が確定しますからね。
投資のネットスラングで「売って確定するまでは損失ではない!」なんてアーアーキコエナイ的な用法がありますが、まさにその状態になってしまったわけですな。
とは言え、これだけ急激な利上げが続いたんですから、読み違えた銀行が1行や2行、破綻してもおかしくはありません。
ただ、SVB破綻に関しては、問題というか、気になるポイントが2つあります。
1つ目は、SVBもシグネチャーバンクにしても、監査を担当したのがKPMGであること。
KPMGと言えば、世界4大監査法人のひとつですが、そんな立派な監査法人が監査した銀行がサクっと倒れてしまったわけで、当然ながら、他も大丈夫なのか?という雰囲気になります。
妙な勢いで、その不安が広がり過ぎなければいいのですが。
2つ目は、融資先の内、ESG系の占める割合かなり高かったこと。
シリコンバレーという名前なので、テック系スタートアップ企業ももちろん多いのですが、グリーン関連の企業への融資もかなり多く、また、グリーン関連債権の組成にも多く関わっていたようです。
BLM運動にも相当お金を出していたことが報じられていますから、リベラル系御用達の銀行とも言えそうですね。
この胴元が破綻したということは、リベラル系への打撃とともに、アメリカのグリーン政策が少し足踏みになるんではないでしょうか。
アメリカにしても、ヨーロッパにしても、グリーン政策の進め方は、ちょっと原理主義的ですからね。
危機感も解るんですが、現実的な立脚点を持っていないと、ただの夢物語になります。
ヨーロッパで2035年の内燃機関全廃を目指す法案に対して、ドイツなどから意義が出ているのも、同じでしょう。
SVBの破綻が、そういう現実的な視点の大事さを省みるきっかけになるといいんですが。