2022年9月15日木曜日

東部反攻

ウクライナ情勢が、新たな局面を迎えています。
両陣営のプロパガンダや、いわゆる大本営発表などもあるので、実際はどうなのかと続報を見ていましたが、ウクライナ東部でのウクライナ軍の大規模な反攻は本当のようですね。
ロシア自身も、イジューム撤退を認め、暗に敗北を認める発表をしているほどですし。
しかし、戦線が膠着した状態から、これほど短期間に支配領域を奪還した例は、戦史を見てもなかなか無いんじゃないでしょうか。
通常、戦線が膠着する状態というのは、両陣営が防衛線を構築して一定の場所に留まっているわけですから、相手側をかなり上回るような、戦線突破が可能な戦力が必要となります。
さらに、当然ながら後詰もあるわけですから、その援軍をも撃ち破れる戦力が必要なわけですね。
しかし、ロシアもウクライナも戦力の確保には苦労していますから、相当ハードルが高く、なかなか膠着を破るのが難しかったわけです。
そこに登場したのが、アメリカが供給したHIMARS。
高機動で、素早く展開し、アウトレンジから精密射撃を行い、素早い移動で発射地点への相手の攻撃をかわすという、兵は迅速なりを体現した多連装ロケット砲です。
孫氏の時代の「兵は迅速なり」というのとは運用的な意味は違いますが、本質は同じですね。
素早い移動で虚を突き、主導権を握る。
と言っても、ウクライナ軍は8月からこれを盛んに南部で運用していました。
東部ではなく、南部。
誰が作戦を立てたかは知りませんが、絶妙ですね。
しかも、前線となっているヘルソン州だけではなく、範囲を広げてクリミア半島までHIMARSで攻撃したといわれます。
こういう状況では、いよいよ南部で反攻するというのをロシアも信じてしまったのかもしれませんね。
本当かどうかは分かりませんが、東部から戦える戦力を抽出して南に展開させたと言われています。
これにより、東部に残されたのは、練度の高くない部隊と、後詰の薄い戦線でした。
そこへウクライナ軍が機甲部隊で戦線を突破した、というわけですな。
お手本のような陽動作戦です。
後詰が薄くなっていたロシア軍は、破られた戦線に戦力を投入して押し戻すことができませんでした。
こうなると、戦いと言うのは雪崩を打って潮目が変わります。
戦線を東に突破したウクライナ軍が南北に展開すると、破られた戦線の南北に布陣するロシア軍は包囲殲滅に遭いますから、死地を脱しようと我先に後退し、それがさらにその南北のロシア軍に伝染するという、まさに戦線崩壊状態となるわけですな。
今回の戦いで、ロシア軍はこの4ヶ月で得た戦果の多くを失うことになりました。
また、我先にと撤退した結果、足の遅い輸送部隊を組むことができす、戦車や戦闘車両、装備品や食料といった物資がそのまま残置されましたから、戦力も大きく低下したと見られます。
まだまだ先は見通せませんが、この戦いが今後のキーポイントになったのは間違いないでしょうね。
 

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