2013年11月5日火曜日

江戸時代と米 その2

長くなってしまった前回の続きで徒然に。


江戸時代となり、合戦をすることが無くなると、各藩は余ったリソースを開拓開墾に向けました。
こうして江戸時代前期から中期にかけて猛烈な新田開発が進むんですな。
各藩は、合戦に備えた動員体制をスリム化せずに行政組織へと転じたわけですから、仕事を創るという公共事業的な側面もあったと思います。
また、米本位制の武家社会では、新田開拓は事業拡大ですから、米を払う藩政府側としては収入が増えてありがたいわけです。

大名家の石高は表高(オモテダカ)と呼ばれていました。
これは江戸時代初期の石高です。
現在で言うところの地価の評価額が近いかな。
大名の実際の収入はと言うと、実高(ジツダカ)や内高(ウチダカ)と呼ばれていました。
地価で言えば実勢価格というやつです。
各藩は新田開発をしていましたから、大抵は表高より実高のほうが多かったのですが、山間部の小藩などでは、実高のほうが低かったという場合もありました。
大藩では新田開発の規模も大きく、江戸時代末期には表高と実高が2倍以上も違う藩すらありました。
幕末の長州藩なんかはその典型で、それが志士の活動の経済的バックボーンになったといわれています。
それはさておき、時は大増産時代。
「米穀王に、俺はなる!」
と言った藩主がいたかどうかは知りませんが、各藩は増産で得た米をせっせと大坂の米市場に送って金銀を得ていました。

前回で、武家社会は米本位制と言いましたが、商人の世界は違ってました。
商人の世界では、関西は銀中心、関東は金が中心の金銀本位制でした。
当然、米を給料としてもらう武士は、生活していく上で金銀を基にした貨幣に交換しなくてはなりません。
時は大増産時代。
「米k・・・(略)」
大坂の米相場に大量の米が送り込まれる時代になると、人口も増えたとは言え、供給が多いわけですから値崩れが起こります。
すると武士が手にする実質的な賃金は少なくなってしまいます。
これが江戸時代の貧乏武士形成の一端でした。
根本的には、市場経済や貨幣経済の発達で、一次産品である米本位制より金銀本位制が有利になったいったというのもあるんですがね。

江戸時代というのは、武士という支配者層の比率が高い時代でした。
そして、その生活はというと、被支配者層とあまり変わらない生活で、零細武家では内職や畑仕事というのが当たり前。
お金で威張れないから、名誉と誇りを重んじる。まさに、「武士は喰わねど高楊枝」。
江戸時代に完成した武士道という価値観には、こんな側面もあるわけです。
ヨーロッパの騎士道は、ナイトという領主層、言わば富裕者に課せられる義務のという側面があり、その名残がある欧米では、今でも富める者は寄付をして当たり前というような習慣があります。
金持ちなんだからそれなりの規律と社会貢献が求められる、と。
しかし、武士道では富裕でもない者にも規律や誇りが求められました。
そして、失敗や粗相をすけば切腹など、高潔な命をもって贖う。
こういう支配体制っていうのは、世界的に見てもかなり珍しいんじゃないんでしょうかね。
実際の経済的見返りが少ないのに、責任はとんでもなく重大なのです。
中には、やってらんねぇと武士を廃業する人も結構いたんですがね(笑)
経済体制を見ても、江戸時代は、米本位制と金銀本位制の2本立て、場合によっちゃ関東と関西での金本位制と銀本位制の並立を入れて3本立と考えることも可能で、江戸時代というのは色々面白い時代ですな~

1 件のコメント:

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