2022年3月13日日曜日

進む分断

ウクライナ侵攻以来、東西冷戦の頃の雰囲気が戻ってきていますね。
世界が分断されていたあの頃に。
いや、当時は分断されつつもそれなりの秩序と仕組みはありましたから、それよりも厳しいかもしれません。
侵攻を切っ掛けとした金融制裁により、ロシアの外貨準備は凍結され、ルーブル安が進んでいます。
そのせいで、ロシアのデフォルトの可能性は非常に高まっていますが、ロシア政府はルーブルで支払うことが可能とする法令を成立させ、ルーブルで支払うのでデフォルトにはならないと強弁する始末。
ドルで貸したのに、値が下がり続けるルーブル、しかも恐らくは公定のレートで支払って貰っても、どうしようもないでしょう。
デフォルト認定は貸し手の認識ですから、ルーブルで払うことにデフォルト回避的な意味はないですし、普通の投資家は当分の間、恐らくは10年以上、ロシアの外貨建て債券は買わないでしょうね。
航空機のリース問題もそうです。
国際線を停止させ、リース契約を解約された機体の差し押さえを阻むつもりのようですが、その影響からリース債権を組み込んだ金融商品が大荒れです。
こうなってしまったら、ロシア向けで航空機のリースは今後も成立しなくなりますな。
ニュースで「借りパチ」という懐かしい表現が使われていましたが、まさにその通り。
でも、エアバスもボーイングもロシアから撤退を表明していますから、正規部品が供給されず、「借りパチ」しても共食い整備ぐらいしかできませんけども。
そして、とどめは撤退する企業の商標や特許の使用の無償化したこと。
法律の立て付け的には、ロシア政府が強制的にライセンス許可を命じ、0%のライセンス料を払うということらしいです。
いずれにしろ、撤退企業の知的財産がロシア国内で使いたい放題ということになりますな。
更に、事業停止をしている企業に対して、再開をしない場合は資産没収ができるような法律策定を進めているようですから、ロシアに進出していた企業は全損処理しかありません。
こんな前例ができると、ウクライナでの軍事衝突が終了しても、ロシアに進出しようという西側の企業は二の足を踏むでしょうね。
すなわち、ウクライナの状況や結果に係わらず、今後はどんどんと分断が進むというわけです。
それがどれくらいの期間になるのかは不明ですが、イランや北朝鮮などとは違い、GDP10位の国ですからね。
そんな国が、金融や物流から離脱するというのは、世界にとってもかなり大きなインパクトで、今後どういう世界になっていくのか、ちょっと想像がつかないですな。
 

2022年3月7日月曜日

北風がドミノを倒す

北風と太陽という童話があります。
旅人のコートを脱がせる為に太陽と北風が競う話。
人間同士の関係でも時々見られるんですが、安保が絡むと、こんな連鎖的に、しかもはっきりと見られるんですね。
ロシアのウクライナ侵攻以降、ロシアが全方位的に恐喝まがいの外交をした結果、ウクライナと同じくソ連の旧衛星国かつロシアから軍事的な圧迫を受けている、ジョージアやモルドバもEU加盟を申請しました。
また、ポーランドやバルト3国など、旧ソ連の衛星国だった国々は、ウクライナが陥落すれば次の火の粉は自分達に降り掛かってくると、エネルギーという命綱を握られている西欧に比べて強硬な声を上げています。
そして、ソ連とは因縁がありつつも中立の軍事的姿勢を保っていたフィンランドとスウェーデンも、ウクライナ側に立って武器を供与し、国民の間でもNATO加盟論が盛り上がってきているとのこと。
北風も北風、暴風ですな。
コートをしっかりと巻き込み、襟を立てて北風に抗うが如く、ベラルーシなどを除いて反ロシアということで西欧から東欧までが、ドミノ倒しのようにまとまりそうな勢いです。
国家というのは組織が大きい為、何事も決定に時間が掛かりがちですが、こんな劇的に物事が進むのは珍しい。
ほぼ1週間の出来事ですからね。
一方、ロシアの脅威をあまり感じていない日本の動きを見ると、やはり鈍いですな。
ロシアは隣国であり、北方領土という領土問題を抱えてる関係なんですが、ね。
ようやく今日、渡航中止勧告が出ました。
何事も欧米に追従する必要はないですが、ロシアがリース切れの航空機の差し押さえを免れる為に国際線を止めるという状況になってからですから、遅きに失した感があります。
また、ユニクロが営業を続けると表明したように、欧米の企業に比べて、企業の営業中止の判断も鈍いですね。
金融は、最大手のズベルバンクを通じた取引がまだ可能ですが、物流は止まりつつありますし。
グローバルに展開した企業では、商品がロシアの外から補給できず、すぐに無くなるのが目に見えています。
どう商売していくんですかね。
また、日本全体に横たわるこの辺りの判断のスピード感は、この問題だけの話ではない、もっと本質的な部分として、ちょっと気にはなりますな。
 

2022年3月2日水曜日

経済制裁の影響

ロシアのウクライナ侵攻に対して、西側各国は経済面での核とも称されるSWIFT排除を含む経済制裁を策定しました。
かなり素早い対応でしたね。
これにより、影響がかなり広がってきています。
ただ、最も影響が大きいと思われたSWIFTからの排除には、ロシア最大手のズベルバンクやガスプロム系の銀行が含まれず、思ったよりも影響は大きく無さそうですな。
他銀行もズベルバンク経由で決済できるわけですからね。
その他では、
 
・各国でのロシア中銀の預金等凍結
・ルーブルの暴落に伴う基準金利20%への変更
・外貨収入のあるロシア企業に対する8割の外貨売却命令
・ズベルバンクの各国子会社の破産や売却の検討
・各国上空の航空機通過の禁止
・船舶や航空機の再保険を受けているロイズが再保険の引き受けを停止
・ロシア国内の約半分を占める航空機のリース契約の解除
・各国企業のロシア事業からの撤退
・ノルドストリーム2の運営会社の破産検討
・エクソンモービルのサハリン1からの撤退
・シェルのサハリン2からの撤退
・TSMCなどの半導体の輸出停止
・各スポーツのロシア選手の参加停止
 
などが報じられています。
多すぎて追い切れないぐらい。
流れを見ていると、金融だけではなく、物流や諸々の製品等の製造、メンテナンスまで止まる勢いです。
ロシア国民の生活が、10年単位で巻き戻されかねないですね。
これら一覧の中でも、徹底されなかったSWIFTからの排除よりも影響が大きそうなのが、ロシア中銀の資産凍結。
これは相当大きな制裁で、テロ支援国家と同列の扱いです。
プーチン大統領は、ドルの凍結を見越して中銀の外貨準備をユーロや円、元、金などに替えていました。
しかし、国外の外貨資産を凍結されると、使えるのが国内の外貨や金などの現物資産や手持ちの資産に限られ、ルーブル防衛に大きな影響が出ます。
報道では、74兆円程度の外貨準備が実質的に半分程度に減るとのこと。
半分も凍結されていることから、プーチン大統領もこの早さはちょっと想定外だったんでしょうね。
今後も影響は広がり続けそうです。
また、これら制裁の反動として、ビットコイン等の暗号資産のルーブル取引急増、中国の決済網であるCIPSの地位向上などが取り上げられており、経済面でも世界の役割や機能が大きく変貌しそうですな。
 

2022年2月26日土曜日

ウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻。
そう、侵攻です。
紛うことなき軍事侵攻へと、事態は悪化しました。
有識者の間でも、本格侵攻を決断するとは思っていなかったという声が多いようですが、合理的に考えてもリターンが少ない決断に思え、自分も予想外でしたね。
一時的とは言え、ロシアの株価の50%を吹き飛ばすほどのインパクトですし。
プーチン大統領には、NATOへの根強い不信感があり、どうしても緩衝地帯を作りたい思惑があるようですね。
思えば、戦前の日本が朝鮮半島に進出したのも、南下するロシアに対して朝鮮半島を緩衝地帯化するのに失敗し、突き出した半島をロシアに取られれば喉元のナイフになってしまう恐怖からでした。
古くは、上杉謙信が自領外の川中島で武田信玄と衝突したのも、義理堅い謙信の性格はあるにせよ、軍事的には、本拠春日山城に近く喉元のナイフと成り得る北信を取られる恐怖からでしたしね。
帝国主義時代の東南アジアでは、イギリスとフランスが緩衝地帯を作る為に、タイを独立国として温存し、植民地化しませんでした。
古今東西を問わず、軍事的にも政治的にも、緩衝地帯は安定と安心をもたらします。
それは解るんですがねぇ
解るんですが、現代ではリスクが大きすぎる。
特に今回はリターンに対して失うものが多すぎる気がします。
また、多くの住民が迎え入れる意思のある東部だけならともかく、首都や全土への軍事侵攻となると、投入兵力がちょっと少ないような。
戦国時代でも、城を落とすには5倍の兵力が要るとされましたが、近代戦でも3倍の兵力が要ると言われます。
ウクライナには20万の兵力があるとされ、予備役も招集し、守備側には民兵も参加していますから、士気は高いでしょう。
その上、西側から最新式の武器が供与されています。
そこに同等の兵力で侵攻しても、ゲリラ戦術のような非対称戦を仕掛けられたら、泥沼の長い戦いになりかねません。
プーチン大統領は、恐らく電撃的に首都を制圧してゼレンスキー大統領を引き摺り下ろし、親ロシア政権を樹立するというのが狙いだと思いますが、その狙い通りにスムーズに進むのかは、微妙なところになってますね。
情報戦もあって、伝わる情報は玉石混交で確度も不明ですが、ロシア自身が想定していたよりも進捗は遅れているようです。
この作戦が早期に成功しないと、侵攻終結の落とし所が非常に難しくなってきますが、どうなるのか。
また、外交では、スウェーデンやフィンランドに対しても、ロシアはNATO加入を牽制して強硬姿勢を示しており、NATO絡みで全方位的な敵対姿勢を取っている雰囲気です。
これも心証が悪く、国際政治的に非常に厳しい立場になりつつありますな。
軍事的にも外交的にも、次の1週間で大きく事態が変化すると思われ、目が離せません。
 

2022年2月23日水曜日

ウクライナでついに

ついに、ウクライナへのロシア軍の進駐が始まりましたね。
これを侵攻とするかは、ロシア側か西側かの立ち位置で変わるとは思いますが。
振り返れば、ソチオリンピックの直後のクリミア動乱も似たような流れでした。
オリンピックが2014年の2/23までで、その閉会後のタイミングを見計らって2/27にロシアともクリミアの新露派ともいわれる武装集団が核施設の占拠に動き始めます。
そして、3/1にロシアは正式な軍投入を決定、17日には住民投票の結果を受けてクリミア議会が独立宣言とロシア連邦への編入を議決、翌18日ロシアによるクリミアの独立承認が行われました。
その後、ミンスク合意という停戦合意が結ばれ、クリミア半島を始めとするウクライナ東部の勢力図が固定化されたまま今に至ります。
今回も、その流れに近いですね。
独立承認が先に来ていますが、現地の親ロシア住民やロシア系住民を煽って機運を高め、それを利用する形で軍事力を進駐させるという形。
今回は、ウクライナ東部のドネツク州とルガンツク州という、ドネツ炭田を中心とした工業地帯ですから、もちろん地政学的な重要性というのはあるんですが、港湾を擁するクリミア半島と同様に、大ロシアを目指す上で強かりしソ連時代の郷愁といったものもあるのかもしれませんね。
ただ、ポイントとして、ドネツクとルガンツクに対してロシアが承認したのは、親ロシア派が実効支配する地域ではなく、両州全体であること。
つまり、親ロシア派やそれと協力するロシア軍が、今の実効支配から勢力を拡げる戦闘を行う可能性があることなんですよね。
西側の反発や制裁の程度によっては、今後も長引きそうな感じです。
さて、その西側諸国のロシアに対する制裁ですが、初報ではちょっと弱いですな。
 
米 - 親ロシア地域に対する取引等の停止
英 - 5銀行3個人に対する資産凍結や取引停止
欧 - 27の個人と団体に対する経済的制裁
独 - ノルドストリーム2の承認作業の停止
 
リスト化して見ると、ガスパイプラインであるドイツのノルドストリーム2が最も有効と思われますが、稼働前でもあるので、ロシアにとっては現状維持といえば現状維持。
また、資源高騰と供給不足に頭を悩ませるドイツにとっても、稼働延期は痛い話です。
また、しばらく前には、アメリカはSWIFTという国際銀行決済網から外すという手法もチラつかせてましたが、今回はそこには踏み込んでいません。
銀行決済から外すと、ドルのやりとりができませんから、ロシアの貿易は大幅に縮小しますが、当然ながらその相手先にも影響が及びます。
その相手先には、西側諸国、特にアメリカとドイツが多いんですよね。
お互いに経済の大事な所を握り合っている状態でどこまでの制裁を掛けられるのか、難しい判断ですな。
 

2022年2月18日金曜日

日本政府の危機感

日々、熱戦が繰り広げられている北京オリンピックもあと僅か。
お陰さまで、観るものには困らない生活が続いていますな(^^)
ただ、オリンピックに関しては、日本政府の危機意識というか、情報に対するスタンスがちょっと気になりました。
 
 
いやいやいや。
あまりにも遅くないか?
アプリを入れた時点で、権限を与えてたら抜かれ放題やん。
中国に批判的な声を上げている西側諸外国はというと、1月の段階で早々と使い捨てスマホを使用することを決め、個人のプライベートのスマホは持ち込み自体をしないよう呼び掛けていました。
 
 
この差。
パラリンピックに対しては、他の西側の国々と同様にスマホの配布を決めましたが、オリンピックの選手は間に合っていないですからね。
ちょっと意識が弱いですな。
それとも政府の決断が遅かったのか。
日本は、伝統的にリスク評価が苦手で、情報軽視の傾向がありますが、いずれにしても、もうちょっと何とかしてほしい部分ではありますな。
 

2022年2月9日水曜日

TSMCへの補助金

先日、アメリカでこのような法案が通りました。
 
 
アメリカには、制御系の半導体メーカーとしてインテルや、DRAMなどを主とするマイクロンという半導体企業がありますが、TSMCやサムスンといった企業も視野に入れた国産化の安保政策ですね。
EUでも、域内生産の整備に対する補助金を出す法案が検討されています。
翻って日本。
昨年12月の話ですが、TSMCがソニーグループと共同出資によって九州に作る工場に対し、政府は補助金を出すことを決めました。
今後、複数年に渡って拠出し、合計額は4000億円になる見込みです。
これに対し、今更半導体を誘致しても遅いとか、導入するプロセスが古いとか、世界の半導体製造に追いつけないといった論評をいくつか見ました。
ん~~~、なんかねぇ、ちょっと筋が違いますよね・・・
そこは狙ってないだろう、と。
今回のTSMC誘致に関して改正したのは、「特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法」。
この適用認定を受ける為には、
 
・一定期間以上の生産の継続
・需給逼迫時の増産対応や研究開発を含む国内での安定的な生産
・技術情報の適切な管理
 
などの条件を満たす必要があります。
1つ目は補助金を出す条件には必須として、2つ目は今のような逼迫時への対応と技術習得、3つ目は安全保障に関する条項ですね。
もちろん、技術習得が目的のひとつであることは間違いありませんが、半導体の供給が逼迫している今の状況を反映した改正なので、この供給不安が長引く状況に加え将来的な需要増加予測を考えると、その対応が目的の相当部分を占めるんではないでしょうか。 
単純に技術的なことを言えば、このTMSCの工場で作る半導体はロジック半導体と呼ばれるものですが、世界の先端を行く1桁nmではなく、22~28nmというかなり古いプロセスです。
なので、この数字の部分だけを取って見れば、今更こんな古いプロセスを補助金を出してまで誘致してどうするんだ、というのは解らなくはないですが、それは表面的過ぎるんですよね。
国内のルネサスや旭化成で作っていたプロセスは、40nm以上でもっと古い為、国内勢にとってはより進んだプロセスという技術導入面でのメリットがあるのは当然として、技術の世界では、「古い=枯れて安定性が高い」という認識ですから、リセットがそうそうできない製品や10年単位で動く製品に関しては、古いプロセスの半導体は非常に大事な部品となっており、今問題となっているそれらの半導体供給が安定するわけです。
22~28nmの製造プロセスの半導体は、今はまだ精密機器への使用が中心ですが、今後は、他の工業製品の制御用として使われる制御用半導体も22~28nmが中心になるといわれていますからね。
この枯れた半導体の安定供給は、他の製造業に対するプラスの影響が大きいんですな。
特に自動車など、これからEV化やFCV化が進むと、使用する半導体は数倍から5・6倍になるとの予測もありますし。
こういう面を考えると、そんなに悪くない現実的な投資判断だったと思いますね。
 
また、世界的な動きを見ると、冒頭のニュースのようにアメリカの動きとも連動していると言えます。
アメリカに比べれば、財政規模は相当小さいですが。
アメリカのこの政策の念頭にあるのは、もちろん中国。
対中国を念頭に、安全保障関係のサプライチェーンの再構築を図っており、それが日本にも波及したと言えるんでしょうね。